呼び方ひとつに、巨大企業の知恵が詰まっていた
うわっ、名前が短くなっていく会社があるなんて!?
初めて日立製作所の文化に触れたとき、正直そう思いました。
■ 古い会社には、必ず「文化」がある
どんなに古い会社でも、いや、古い会社だからこそ、必ず独自の文化があります。
日立は100年以上の歴史を持つ企業です。当然、数えきれないほどの文化が積み重なってきました。
その中の一つが、社内で有名な「日立用語」です。
■ 拝承、~したく。そして“呼称”という文化
「拝承しました」「〜したく存じます」
こうした言葉遣いは、日立らしさの象徴として知られています。
でも、もっと面白いのは人の呼び方です。
日立では「山口さん」とは呼びません。
基本は、(山口)。
■ 役職が上がると、名前が削られていく
さらに不思議なのはここからです。
-
課長になると → (山口)k
-
部長になると → (山口)B
-
さらに上に行くと → (ヤマグ)
-
もっと上だと → (ヤマ)
-
最後は… → (ヤ)
「え、なんで名前が減っていくの?」
誰もが一度はそう思います。
■ 実はこれ、工場発の“改革”だった
この不思議な文化、実は工場の業務改革から生まれました。
日立では長らく、紙の稟議書で意思決定をしていました。
稟議書には〇が並び、その中に「名前」「役職」を手書きで書いて、上へ上へと回していきます。
当然、上の人ほど名前を書く回数が多い。
■ 漢字を書く時間は、会社全体のムダだった
もし役員に画数の多い漢字の人がいたらどうなるか。
その名前を書くたびに、社員全員の時間が削られていきます。
書き間違えれば、差し戻し。
漢字を間違えれば、また書き直し。
そこで考えられたのが、
-
名前はカタカナで短く
-
役職はアルファベットで一目で分かる
という仕組みでした。
■ 書く時間を減らし、役職検索も不要に
カタカナで短い名前=偉い人。
アルファベット=役職。
これだけで、
「誰の承認か」「どのレベルか」を考えずに分かる。
つまりこれは、
文字の形そのものを使った業務効率化だったのです。
■ 手書き文化だからこそ生まれた知恵
これは、手書きの稟議書が前提だった時代だからこそ生まれた、
企業規模での本気の改善策です。
80年代、90年代。
日本の高度成長を支えた企業文化は、
こんな細部にまで及んでいました。
■ 電子化で“逆に不思議な文化”へ
今は電子化・メールの時代。
漢字変換も一瞬です。
その結果、
()呼びは逆に分かりにくくなり、
過去の不思議な文化に見えるかもしれません。
でも、その背景を知ると——
とてつもなく合理的だったことが分かります。
■ いま、ここまで考える会社はあるだろうか?
呼称ひとつに、会社全体の時間をかけて向き合う。
これを大企業レベルでやり切った日立は、やはりすごい。
今の時代、
ここまで踏み込んだ企業文化改革をできる会社は、
果たしてどれだけあるでしょうか。
すごい企業を支えるのは、
やはり「文化」そのもの。
学ぶことは、まだまだ多い。
私ならできる!明日から踏み出す
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