「自信」を持っていた、あの頃
うわっ!“エンジニア人生の地図”が、ロンドンで一気に書き換わった──。
社会人8年目。
それなりにシステム構築を経験してきた。
Java4。
当時としては最先端側のシステム管理にも関わっていた。
国内案件も複数経験し、自分なりの自信もついてきていた頃だった。
「海外のシステム担当と連携する」
それだけで胸が高鳴った。
しかも場所はロンドン。金融システムの中心地の一つだ。
研修前、私は大量の手順書を読み込んだ。
システム概要、運用設計、障害対応フロー。
だが、そこでまず驚いた。
「特別なシステムなのに、ここまで書くのか?」
そのシステムは、かなり特殊だった。
しかも自前で作り込まれている。
普通なら“属人化”していてもおかしくない。
だが実際は逆だった。
手順書が異常なほど整理されていた。
まるでソフトウェアそのもののように、構造化されている。
「誰が見ても分かるように作る」
そんな思想が、資料全体から滲み出ていた。
日本では、“詳しい人しか分からない資料”に出会うことも多かった。
だが、ロンドンでは違った。
“人に依存しない設計”を、本気でやっていた。
ここでまず、考えさせられた。
「日本は丁寧」と言われる。
だが、本当にそうなのか?
ロンドン金融システムの現場で見た“異様な景色”
さらに衝撃だったのは、実際の運用現場だった。
巨大なスクリーンが9枚。
一人のオペレーターが、その全体を監視している。
しかも、その人が説明までしていた。
全体説明。
詳細説明。
運用設計。
障害時の考え方。
カバー範囲が、とにかく広い。
こちらは5人以上で話している。
だが向こうは、ほぼ一人。
「え?」
正直、最初は理解できなかった。
日本なら、
インフラ担当、DB担当、運用担当、アプリ担当…。
細かく役割分担されることが多い。
だが、ロンドンの現場では、一人が広く深く理解している。
もちろん裏にはチームがいる。
だが、“その場で説明できる範囲”が圧倒的だった。
「世界で戦う」とはこういうことなのか?
私は、その時初めて感じた。
「日本のエンジニアは、分業に最適化されすぎているのでは?」
もちろん、日本の品質は高い。
慎重さもある。
レビュー文化も強い。
だが一方で、
「自分の担当範囲しか分からない」
そんな構造にもなりやすい。
ロンドンで見たエンジニアたちは違った。
業務理解。
システム理解。
運用理解。
顧客理解。
全部を横断していた。
しかも驚いたのは、残業が少ないことだった。
「能力が高い人に広く任せる」
だから意思決定が速い。
会議も短い。
責任範囲も明確。
日本では、
“人数を増やしてカバーする”
海外では、
“高い能力でシンプルに回す”
そんな違いすら感じた。
スーパーマンなのか?それとも文化なのか?
あの時、私は本気で思った。
「ロンドンの金融システム専門家は、スーパーマンなのか?」
だが、今振り返ると少し違う気もする。
個人能力だけではない。
育成。
責任範囲。
設計思想。
ドキュメント文化。
任せ方。
そうした“組織構造”そのものが違っていたのだと思う。
日本では、
「失敗しないこと」
海外では、
「自律的に動けること」
そこに重きが置かれていた。
もちろん、どちらが正しいとは言えない。
だが少なくとも、あのロンドン経験が、私のエンジニア人生を変えた。
「自分は何ができるのか」
「何ができないのか」
それを初めて客観的に理解できた。
そして思った。
世界は広い。
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