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「グローバル案件=英語ができる世界」だと思っていた。待っていたのは“翻訳地獄”だった。

うわっ!机の上に積まれた英語ドキュメントが、まるで金融街のビル群みたいに見えた――。

社会人8年目。
私はずっと「グローバルプロジェクトに入りたい」と手を挙げ続けていた。

英語は少しだけ自信があった。
とはいえ、TOEICは750点。
今思えば、全然ペラペラではない。

でも、海外案件に関わりたい。
海外の人たちと仕事をしたい。
日本だけでは見えない世界を知りたい。

そう思いながら、少しずつ英語を勉強し、その時を待っていた。

そして、ついにそのチャンスがやってきた。

「英語プロジェクトに入ります」

当時の私は、かなり嬉しかった。
やっと来た。
待ちに待ったグローバル案件だ、と。

ただ、そのタイミングで気になっていたことがあった。
チームの中に、かなり強烈な“パワハラ気質”の営業がいたことだ。

正直、空気は重かった。
でも、仕事は仕事。

「せっかく掴んだチャンスだ。全力でやろう」

そう自分に言い聞かせていた。

ロンドンが本拠地の金融システム

プロジェクトの中心はロンドン。
ロンドンの金融会社のシステム部門が持つシステムを、日本へ展開する案件だった。

日立は、日本側ベンダーとして参画。
私たちの役割は、そのシステムをプロフェッショナルの視点で確認し、日本への導入方法を探ることだった。

基本的には、ロンドンで動いているシステムをパッケージ化して持ってくる。

日本側にもサポートメンバーはいる。
しかし、本拠地は完全にロンドン。

つまり、情報も文化もルールも、全部“向こう基準”だった。

そして、アプリケーション部隊は――私一人。

最初の仕事は「読むこと」

大量のドキュメントが渡された。

運用設計書。
スケジュール定義。
バッチ処理設計。
DB設定。
サーバ構成。
ネットワーク構成。
外部システム連携。

金融システムらしく、かなり細かく書かれていた。

逆に言えば、読むことができれば、全体像は見えてくる。

だから最初の仕事は明確だった。

「まずは、このドキュメントを読み解くこと」

しかし、最大の問題が発生する

2次ベンダーから、それぞれ専門領域を持ったメンバーがアサインされてきた。

サーバ担当。
ネットワーク担当。
DB担当。

みんな、それぞれのドキュメントを読み始める。

…が。

問題はシンプルだった。

誰も英語が分からない。

いや、正確には、読めないわけではない。
でも、金融システム特有の専門英語を理解できない。

すると、自然と役割が集まってきた。

「山口さん、これ読めます?」
「この意味、分かります?」
「これ、どういう構成ですか?」

気づけば、システム全体をアプリ観点から見ている私が、“翻訳ハブ”になっていた。

グローバル案件の現実

そして、ついに決まった。

「とりあえず全部翻訳しよう」

もう一人、通訳レベルで英語ができるメンバーと一緒に、翻訳業務が始まった。

今みたいにAIはない。

Google翻訳を駆使して、文章を一つずつ翻訳する。
意味が変なら修正する。
専門用語を確認する。
また翻訳する。

朝から晩まで翻訳。
本当に翻訳。
ひたすら翻訳。

私は途中から、「自分は翻訳マシーンなのでは?」と思い始めていた。

でも、その時に痛感した。

グローバルプロジェクトとは、「英語」ではなく「構造理解」

当時の私は、グローバル案件とは“英語を話す世界”だと思っていた。

でも実際は違った。

本当に必要だったのは、

・システム全体を構造で理解する力
・専門用語を読み解く力
・異文化の前提を理解する力
・分からない中でも進める力

だった。

英語は、あくまで入口。

本質は、「異なる世界をつなぐ力」だったのだ。

だからこそ、あの翻訳地獄の日々は、後の自分に大きな土台を作ってくれた。

あの時、大量の英語ドキュメントに埋もれながら、私は少しずつ“グローバルで戦う視点”を身につけていったのだと思う。

私ならできる!明日から踏み出す

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