あっ!システムがまるで家庭菜園のように扱われていた!
私はシステム屋として約8年間、多くのシステム開発に携わってきました。
バッチシステム、Webシステム、メール連携システム。
ベンダーとして様々な案件に関わり、ある程度の規模のシステムであれば一通り経験してきたと思います。
お客様から要望を受ける。
影響調査を行う。
修正計画を立てる。
開発する。
テストする。
リリースする。
そんな流れを何度も繰り返してきました。
私が所属していたのはアプリケーション開発部隊です。
そのため、依頼される内容も比較的大きな改修が中心でした。
小さな変更はほとんど来ません。
結果として、一つひとつの案件がシステム開発プロジェクトになります。
3カ月。
半年。
場合によってはそれ以上。
システムを「作る」という感覚はあっても、「育てる」という感覚はありませんでした。
■ロンドンで出会ったシステムのオーナーたち
そんな私がロンドンであるシステムの説明を受けたときのことです。
説明してくれたのは開発ベンダーではありません。
システムのオーナーメンバー。
おそらくシステムを発注している側の人たちです。
彼らは驚くほど自然にシステムを説明していきました。
機能説明をしながらジョークを挟む。
参加者を笑わせる。
議論を楽しむ。
どこか余裕がある。
正直に言うと、私はそんな会議に少し憧れていました。
システムを熟知しながらも、肩肘張らずに語れる姿です。
■日本との違いはどこにあったのか
説明が進む中で、日本側から質問が飛びます。
「こんな機能はないのですか?」
「あんな機能も欲しいですね。」
すると彼らは否定しません。
難しい顔もしません。
メモを取りながらこう答えます。
「それは次のリリースに入ります。」
「それはロードマップに追加していきます。」
私はこのやり取りに衝撃を受けました。
なぜなら、日本ではよくこうなるからです。
「その変更は別案件です。」
「見積もりを作ります。」
「来年度予算で検討します。」
もちろん、それも必要です。
しかし、彼らの会話にはもっと長い時間軸がありました。
今できるかどうかではない。
このシステムをどう成長させるか。
その視点で会話していたのです。
■システムを育てるという発想
彼らはシステムを完成品として見ていませんでした。
リリースはゴールではありません。
スタートです。
利用者の声を聞く。
改善する。
機能を足す。
また利用者の声を聞く。
そしてさらに良くする。
まるで子どもを育てるように。
植物を育てるように。
少しずつ時間をかけてシステムを成長させていました。
だから日本に導入される頃には、日本向けの機能がすでに入っていることもあります。
まだ入っていなくてもロードマップに存在しています。
未来が共有されているのです。
■実は昔から育てていたのかもしれない
振り返ると、2000年代に携わっていたシステムも長年使われ続けていました。
機能追加もしていました。
改善もしていました。
実際には育てていたのです。
しかし、その時の私たちはそう呼びませんでした。
機能改善。
保守対応。
改修案件。
そんな無機質な言葉で表現していました。
だからかもしれません。
開発者自身が愛着を持ちにくかった。
利用者との対話も不足しがちだった。
システムを資産として育てる視点よりも、案件として処理する視点が強かったのです。
■あなたの会社のシステムは育っていますか?
ここで少し議論を呼ぶ問いを投げたいと思います。
日本企業は本当にDXをしているのでしょうか。
もしかすると、
「システムを導入している」
だけで、
「システムを育てている」
わけではないのかもしれません。
導入後の改善予算はありますか。
利用者との対話はありますか。
3年後、5年後のロードマップはありますか。
もし無いのであれば、そのシステムは完成した瞬間から老化を始めているのかもしれません。
ロンドンで出会ったのは技術ではありませんでした。
システムとの向き合い方でした。
作るから育てるへ。
この発想の転換こそが、本当のDXなのではないでしょうか。
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