システム屋と業務担当、その境界はどこへ行ったのか
社会人8年目、ロンドンで感じた小さな危機感
うわっ!お客様との会話が、まるでシステム設計レビューになっていた!
社会人8年目。
もう9年目が見え始めていた頃の話だ。
私はシステム屋として、アプリケーション構築に携わってきた。
お客様の要件を聞き、設計し、開発し、導入する。
システムのプロとしてサービスを提供する立場だった。
そんなある日、日本のお客様がロンドンの企業からパッケージシステムを購入した。
その導入プロジェクトに参加することになり、私はシステム研修のためロンドンへ向かった。
研修期間は2週間。
場所はウォータールー周辺。
ロンドンの金融機関や大手企業が集まるエリアだった。
当時の私は、新しいシステムを学ぶことばかり考えていた。
しかし、本当に学んだのはシステムそのものではなかった。
業界構造の変化だった。
■ お客様との会話に違和感を覚えた
研修やプロジェクトの打ち合わせが始まった。
私はシステムベンダー側として説明を行う。
アーキテクチャ。
データ構造。
運用設計。
インターフェース。
するとお客様から質問が飛んでくる。
しかも、その質問が妙に鋭い。
「その設計だと将来的な拡張性はどうなりますか?」
「データ移行時の整合性はどう担保しますか?」
「パフォーマンス試験はどの条件を想定していますか?」
あれ?
なんかおかしい。
業務要件の質問ではない。
システム屋がする質問だ。
私は少し戸惑った。
■ なぜお客様がこんなに詳しいのか
しばらくして理由が分かった。
実はお客様側の担当者の多くが元システム屋だったのである。
SIer出身。
開発会社出身。
インフラ出身。
転職して事業会社へ移った人たちだった。
つまり、
業務担当者でありながら、
システムのプロでもあった。
私は衝撃を受けた。
それまで私の中には、
お客様=業務担当
ベンダー=システム担当
という構図があった。
しかし現実は違った。
境界線がなくなり始めていたのである。
■ システム屋の価値はどこにあるのか
そこで考え始めた。
私たちシステム屋は何を武器にすれば良いのだろうか。
アプリケーションの専門家として技術を磨くべきか。
しかしサーバ担当もいる。
ネットワーク担当もいる。
データベース担当もいる。
インフラ領域は専門ベンダーが支えている。
ではアプリケーション担当の価値は何だろう。
業務知識だろうか。
しかし、お客様の方が業務を知っている。
しかも元システム屋でもある。
業務も分かる。
システムも分かる。
そんな人たちが増え始めていた。
■ 境界線が消える時代
今振り返ると、あの頃から変化は始まっていたのだと思う。
DXという言葉が一般化する前から、
業務とITの融合は進んでいた。
昔は分業だった。
業務担当が要件を出す。
システム担当が実装する。
しかし今は違う。
業務も理解するエンジニア。
システムも理解する事業担当者。
両方を理解する人材が求められている。
世界の境界線がどんどん薄くなっている。
■ 社会人8年目に感じた悩み
ロンドンでの2週間はシステム研修だった。
しかし私にとってはキャリアを考える時間でもあった。
技術を極めるべきか。
業務を学ぶべきか。
マネジメントへ進むべきか。
専門家として生きるべきか。
業務も分かり、
システムも分かる人が増えていく世界で、
自分は何を武器にするのか。
正直、答えは見つからなかった。
ただ一つだけ感じたことがある。
変化を恐れてはいけないということだ。
境界線がなくなるなら、
自分も境界線を越えていけばいい。
技術だけでもない。
業務だけでもない。
両方を理解しながら新しい価値を作る。
それがこれからの時代に必要な人材なのかもしれない。
社会人8年目。
もう9年目が見えていたあの日。
ロンドンのウォータールーで見た景色は、
システム業界の未来そのものだったのかもしれない。
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