ロンドン生まれのシステムを、日本の現場へつなぐ仕事
「おおっ、地下に行くほど、仕事が面白くなっていく!」
そんな不思議な感覚を持ちながら、私は毎日のようにお客様のビルの地下へ向かっていた。
当時、私はロンドンで開発されたシステムを日本に導入するプロジェクトに、日本側のシステム担当として参加していた。
すでにアプリケーションそのものは完成している。
つまり、ゼロからシステムを作るプロジェクトではない。
しかし、日本で使うとなれば話は別だった。
「完成している」のに、やることは山ほどある
日本側にはインフラチームが大勢集められていた。
さらに、周辺システムとのインターフェース変更など、日本側で追加開発しなければならないものも数多くあった。
私は、その中で少し変わった役割を担っていた。
システムそのものを理解し、それを日本側の関係者に説明する。
ところが、ロンドンから来たシステムの資料は当然ながら英語。
そこで、私が一生懸命取り組んでいたのが「翻訳」だった。
ただ、日本語に訳せばいいわけではない。
「この機能は何のためにあるのか」
「この処理は業務上、何を意味しているのか」
「日本側のシステムとは、どうつながるのか」
翻訳しながら、私は少しずつシステムそのものを理解していった。
私を支えてくれた、二人のスーパー担当者
このプロジェクトには、先方側の担当者が二人いた。
一人は、日本人なのに英語がペラペラ。
しかも、システムのことだけでなく、業務のことまで深く理解している。
まさに「スーパー日本人」だった。
もう一人はイギリス人。
彼も同じようにシステムと業務を理解していて、さらに日本語を勉強していた。
この二人に支えられながら、プロジェクトは少しずつ前へ進んでいった。
二人は基本的に日本にいた。
そして、プロジェクトの開発チームがいた場所が、お客様のビルの地下だった。
地上は「業務」、地下は「作戦」
お客様の業務関係者は上の階。
そして、システムを作り上げていくプロジェクトチームは地下。
なんとも不思議な構造だった。
二人は、ほぼ地下にこもっていた。
私も、翻訳をしたり、システムの説明を聞いたりする機会が増えるにつれて、次第に地下にいる時間が長くなっていった。
地下の部屋で、英語でシステムを勉強する。
分からない言葉があれば聞く。
業務の背景を教えてもらう。
そして、それを日本側に伝えられる言葉に変えていく。
いつしか、その地下の部屋は私にとって「作戦部屋」のようになっていた。
地下に向かうのが、楽しみになった
普通なら、毎日地下の部屋へ向かうなんて、少し気が重くなりそうなものだ。
でも、私は違った。
地下へ行けば、新しいことが分かる。
英語を聞けば、システムの世界が少し見える。
二人と話せば、日本とイギリスの仕事の進め方の違いも見えてくる。
そして、自分が理解したことを日本側のメンバーに伝えることで、少しずつシステムと人がつながっていく。
だから私は、いつもワクワクしながら地下へ向かっていた。
振り返ってみると、あの地下室で学んだのは、単なるシステム知識や英語ではなかった。
海外で作られたシステムを日本で動かすには、「翻訳」だけでは足りない。
技術を理解し、業務を理解し、人に伝わる言葉へ変換する。
DXの現場で本当に必要なのは、システムと人の間に立って、その橋をつくる力なのだと思う。
あの地下の作戦部屋は、私にとってそんなことを教えてくれた場所だった。
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